Hyperledger Iroha 3を基盤に

SORA Nexus

ひとつの共有台帳。主権あるデータスペース。

SORA Nexusは、中央銀行、商業銀行、市場をひとつのネットワークでつなぐよう設計されています。各機関が通貨、ポリシー、データの管理権限を保ちながら、国内決済、クロスボーダー取引、デジタル資産が連携することを目指しています。

開発中・アーキテクチャの検証を継続中

なぜSORA Nexusか

金融システムは分断されている。経済はつながっている。

決済、証券、デジタル通貨は、ますますデジタル台帳上で運用されるようになりました。しかし、それぞれが孤立した島のようです。これらをつなぐには、ブリッジや仲介者、照合作業が必要になるか、管理権限を他者に委ねなければなりません。

  • 01

    分断された台帳

    システムごとに異なるルールと記録を持ち、価値や流動性がネットワーク間で分断されています。

  • 02

    脆弱な接続

    ブリッジや仲介者の連鎖は、クロスボーダー決済にコスト、遅延、新たな障害点をもたらします。

  • 03

    管理か、接続か

    各機関が、自らのシステムに対する主権を保つことと、他者とつながることのどちらかを選ぶ必要はないはずです。

仕組み · 01

ひとつのネットワーク、多くの主権あるドメイン

データスペース

銀行、中央銀行などの機関は、自らのデータ、権限、ポリシー、アプリケーションをデータスペースで管理します。データスペースはパブリック型、許可型、コンソーシアム型のいずれにもでき、それぞれのアクセス権限と情報の公開範囲を定めます。

仕組み · 02

レーン

1つのデータスペースには複数のレーンを設けることができ、各レーンは1つのデータスペースに属します。レーンはトランザクションのルーティングと認証処理を担い、レーンを追加することで処理能力を拡張します。

仕組み · 03

グローバルチェーン

パブリックなトランザクション処理では、レーンがトランザクションの受け入れと順序を認証した後、処理対象となるトランザクションをグローバルチェーンが統合・実行し、結果をひとつの共有履歴に記録します。レーンによる認証だけでは、決済の成功は確定しません。

仕組み · 04

ローカルなファイナリティ

独立した署名を備えるデータスペースのルートは、独自の状態とローカルなファイナリティを持ちます。プライベートなデータと機関のポリシーは、各機関のもとに留まります。

仕組み · 05

連動する決済

このアーキテクチャは、独立して実行を行うデータスペース間で、関連する決済義務を連動させることを目指しています。為替取引の両方のレッグを同時に完了させることや、証券の受け渡しとその代金の支払いを結びつけることなどです。

Hyperledger Iroha 3の内側

言葉が、ルールになる

Kotodamaの名は、言葉に宿る力を信じる日本古来の「言霊」に由来します。Iroha 3では、各機関がルールを記述するための言語であり、Iroha仮想マシン(IVM)がそのルールをすべてのバリデーターで同じように実行します。

transfer.ko
// Transfer example
seiyaku TransferDemo {
    permission AssetTransferRole;

    kotoage fn do_transfer() authorize(AssetTransferRole) {
        ledger::asset::transfer(
            source: AccountId::parse("sorau…"),
            destination: AccountId::parse("sorau…"),
            asset_definition: AssetDefinitionId::parse("62Fk4F…"),
            amount: 10,
        );
    }
}

Kotodamaの送金サンプル。すべてのキーワードに、意味のまったく同じ日本語表記があります。

一つの成果物、一つの結果

同一の状態ルート

  • 誓約 seiyaku せいやく 固い誓い コントラクト本体。1つのIVM成果物にコンパイルされる配備単位です。
  • 言挙げ kotoage ことあげ 言葉に出して表明すること 状態を変更する公開関数。認可された主体だけが呼び出せます。
  • 始まり hajimari はじまり 物事の始め 有効化の際に一度だけ実行され、状態を初期化します。
  • 改善 kaizen かいぜん より良く改めること コードの置き換え時に一度だけ実行され、状態をその場で移行します。
  • 構造からの決定論

    コントラクトは単一のIVM成果物にコンパイルされます。ハードウェア・アクセラレーション(SIMD、Metal、CUDA)は任意で、決定論的なCPU実行へのフォールバックを備えるため、すべてのバリデーターが同じ結果を得ます。

  • 上限と関門

    各プログラムは実行サイクルの上限を持ち、台帳へのあらゆる呼び出しは、ABIを強制し、アカウント・資産・データスペースへの型付き参照を検証する単一のシステムコール関門を通ります。

  • 約束を守るアップグレード

    コードを置き換える際はkaizen(改善)フックが状態を一度だけ移行し、保存済みデータの名前や型を変えてしまう更新は拒否されます。

  • Sumeragi BFTコンセンサス

    ビザンチン・フォールト・トレラントなコンセンサスにより、通常時は約1秒でのファイナリティを目標とし、SORA Nexusのブロックは毎秒生成されます。

  • 開示せず、証明する

    トラステッド・セットアップ不要のFASTPQ zk-STARK証明により、プライベートなデータスペースは証明とコミットメントだけを外部に出しながら、実行内容を示せます。

  • 標準で耐量子

    データスペースのクォーラム証明書には、別途設定しない限り、Dilithium系の耐量子署名方式ML-DSA-87を用います。

  • すべてに一つの符号化

    Noritoがすべてのメッセージに唯一の正準符号化を与えるため、ノードもSDKもまったく同じバイト列を読みます。

  • Rustで実装

    メモリ安全なコアに、SwiftとAndroid向けのSDK、NoritoとJSONの両方のAPIを備えます。

技術的な内容は、オープンソースのHyperledger Iroha仕様に基づきます。Iroha 3は開発中のため、内容は変更される可能性があります。

中央銀行のために

中央銀行マネーのための設計

デジタル通貨は、主権とプライバシーと統制を保ちながら、あらゆる銀行、ウォレット、そして国境の向こうまで届かなければなりません。SORA Nexusは、鍵は中央銀行が握り、接続はネットワークが担うよう設計されています。

  • 通貨主権

    中央銀行は、自らのバリデーター、ルール、記録を持つプライベートなデータスペースを運営します。取引データは内部にとどまり、共有台帳にはコミットメントだけが記録されます。

  • 二層構造を前提に

    商業銀行はそれぞれのデータスペースで参加し、ガバナンスの承認を経て、中央銀行とのアトミックな取引が可能になります。

  • コードとしてのポリシー

    ケイパビリティ・マニフェストが、各アカウントにスロット・分・日ごとの利用枠を割り当てます。明示的な拒否が常に優先され、マニフェストは予定どおりに失効します。

  • 証明によるプライバシー

    プライベートなデータスペースは記録を内部にとどめ、どの証明を外部に出すかは中央銀行が決めます。

  • ガバナンスと監査

    マニフェスト、ホワイトリスト、レーンの変更はガバナンスで承認され、オンチェーンのSpace Directoryに記録されます。レーンの証跡は規制当局向けに出力できます。

  • 緊急時の制御

    ガバナンスはレーンの決済を一時停止でき、停止中の新たな決済は決定論的なエラーで拒否されます。

  • 性能の分離

    データスペースごとにメモリプールと実行環境が独立しているため、パブリックな取引が中央銀行自身の取引を遅らせることはありません。

  • すべてをまたぐ一つのアカウント

    参加者は全データスペースに共通するユニバーサル・アカウントIDを持ち、権限はスペースごとに個別に設定されます。

Hyperledger Irohaでの実績

  • Bakong2020年から稼働するカンボジアの国家決済システム。2025年の取引件数は約13億件。
  • Bokolo Cashソロモン諸島の実証実験。二段階のKYC、銀行間決済、国際送金のシミュレーションを実施。
  • Digital Kinaパプアニューギニアの実証実験。リアルタイム決済と、盗難・紛失時の資金回復機能を検証。
  • DLakラオスの実証実験。Bakongの知見を生かし、QR決済とクロスボーダー利用を検討。

国境を越えて

国境を越える決済を、一度で

現在の国際送金は、それぞれ別の台帳を持つコルレス銀行を経由し、決済まで数日かかることがあります。SORA Nexusは、各中央銀行が自らのルールを保ったまま、為替取引の二つの通貨を一つのアトミックなトランザクションで決済できるよう設計されています。

  1. 開始

    一度の送信で、両方のデータスペースと、取引の両方の脚を指定します。

  2. 準備

    各データスペースが自らのルールで検証し、自分の脚をエスクローします。プライベートなデータは外に出ません。

  3. 決定

    グローバルチェーンが期限内に両方の脚をまとめて確定させるか、記録された理由とともに両方を中止します。

  4. 決済

    各データスペースが自らの脚を確定させ、結果は一つのNexusブロックに記録されます。

  • 資金同時受渡(PvP)と証券同時受渡(DvP)

    同じアトミック・コミットが、為替取引の二つの通貨や、証券とその代金を結びつけます。

  • ISO 20022に対応

    ISO 20022への対応作業は、顧客送金(pacs.008)、返金(pacs.004)、取消依頼(camt.056)に及び、既存システムとの接続を可能にします。

  • すでに国境を越えている

    Hyperledger Irohaを基盤とするBakongは、すでに域内8つの国・地域とQR決済でつながっています。

Bakongの接続状況:カンボジア国立銀行『Financial Stability Review 2025』。

ユースケース

SORA Nexusが目指す活用領域

  • 国内決済とCBDC

    中央銀行が、アクセスとプライバシーに関する独自のルールのもと、自らのデータスペースでリテール型またはホールセール型の通貨を運用します。

  • クロスボーダー決済と為替

    独立して管理されるデータスペース間で、為替取引の両方のレッグを同時に完了させます。

  • ステーブルコインとトークン化預金

    規制下の発行体がプライベートなデータスペースを運用しながら、ポリシーが許す範囲で広いネットワークと相互運用します。

  • 証券とデジタル債券

    Palau Invest貯蓄国債の知見を活かし、証券の受け渡しとその代金の支払いを結びつけます。

  • ガードレールのあるオープンファイナンス

    パブリックなデータスペースは、規制下のドメインのポリシーが許す場合に限り、その資産と連携します。

基盤

10年にわたる本番運用の経験に根ざして

SORA Nexusは、実際の機関で活用されてきたHyperledger Irohaの10年の経験に基づいています。その代表例が、ソラミツがカンボジア国立銀行と共同開発した国家決済システムBakongです。

  • 約4,500万Bakongの口座数
  • 450%2025年にBakongで処理した取引総額のカンボジアGDP比
  • 10年Hyperledger Irohaの歩み
  • 3件太平洋・東南アジアにおける中央銀行デジタル通貨の概念実証

Bakongの数値:カンボジア国立銀行『Annual Report 2025』『Financial Stability Review 2025』

「Iroha 3を基盤とするSORA Nexusを通じて、中央銀行、企業、その他の機関が自らの通貨、ポリシー、データに対する管理権限を保ちながら、世界の経済をつなぎ、高い経済成長を促進することを目指しています。」

武宮誠、PhDソラミツ共同創業者・グループCEO

現在の状況

SORA Nexusの現在地

Hyperledger Iroha 3は開発中であり、ソラミツはSORA Nexusのアーキテクチャの開発と検証を継続しています。自らが運用するシステムとの接続のあり方を共に形づくりたい中央銀行、金融機関、開発者の皆さまと協力しています。

  1. 01

    ニーズを定める

    システムは誰のためのものか。機関として何を管理すべきか。

  2. 02

    ユースケースを絞って検証する

    範囲、参加者、成功の基準を合意します。

  3. 03

    運用に向けて計画する

    統合、ガバナンス、運用上の責任を整理します。

よくある質問

SORA Nexusに関するよくある質問

SORA Nexusとは何ですか?

SORA Nexusは、Hyperledger Iroha 3を基盤とする次世代のネットワークです。データスペースで構成されるひとつの共有台帳として設計されており、中央銀行、銀行などの機関が、自らのデータ、権限、ポリシー、アプリケーションを管理しながら相互につながります。

データスペースとは何ですか?

データスペースとは、ひとつの機関または複数の機関のグループが管理する環境です。それぞれのアクセス権限と情報の公開範囲を定め、パブリック型、許可型、コンソーシアム型のいずれにもできます。1つのデータスペースには複数のレーンを設けることができ、各レーンは1つのデータスペースに属します。

ブロックチェーンのブリッジとは何が違うのですか?

ブリッジは、資産のロックと再発行によって別々のチェーンをつなぐため、コストとリスクが生じます。SORA Nexusでは、データスペースが同じ台帳に結び付けられているため、関連するトランザクションを外部のブリッジではなくネットワーク自体が連動させることができます。

Kotodamaとは何ですか?

Kotodamaは、言葉に力が宿るという日本の「言霊」にちなんで名付けられた、Hyperledger Iroha 3のスマートコントラクト言語です。コントラクトは「seiyaku(誓約)」、公開関数は「kotoage(言挙げ)」と呼ばれ、すべてのキーワードは英語でも日本語でも記述できます。コントラクトはIroha仮想マシン向けのバイトコードにコンパイルされます。

Iroha仮想マシン(IVM)とは何ですか?

IVMはKotodamaのバイトコードを決定論的に実行します。同じ状態に対する同じトランザクションは、ハードウェアにかかわらず、すべてのバリデーターで同じ結果になります。プログラムは実行サイクルの上限を持ち、台帳へのあらゆる呼び出しは検証された単一のシステムコール関門を通ります。

SORA Nexusはなぜ中央銀行デジタル通貨に適しているのですか?

中央銀行は自らの通貨をプライベートなデータスペースで運営し、アカウント単位の利用枠や権限をコードで定め、参加銀行をガバナンスで承認し、どの証明を外部に出すかを自ら決めながら、他の機関と接続できます。BakongやCBDC実証実験で培ったHyperledger Irohaの経験に基づいています。

国境を越える決済はどのように行われますか?

二つの通貨の交換は、二つのデータスペースにまたがる一つのアトミックなトランザクションになります。各データスペースが自らのルールで自分の脚を検証・エスクローし、グローバルチェーンが両方をまとめて確定させるか両方を中止するため、片方だけが決済されることはありません。

各機関はデータや通貨の管理権限を保てますか?

はい。それが中心的な設計目標です。各データスペースは独自のポリシーとプライベートなデータを保持し、独立した署名を備えるデータスペースのルートが、独自の状態とローカルなファイナリティを持ちます。

SORA Nexusはすでに稼働していますか?

まだ稼働していません。Hyperledger Iroha 3は開発中であり、SORA Nexusのアーキテクチャについては開発と検証を継続しています。パイロットや統合についてはお問い合わせください。

SORA NexusとHyperledger Iroha、Bakongの関係は?

ソラミツはHyperledger Irohaのオリジナル開発者であり、IrohaはカンボジアのBakongを支えています。SORA Nexusは、そのオープンソース技術の次世代版であるHyperledger Iroha 3を基盤としています。

既存の銀行システムと連携できますか?

それを目指しています。ISO 20022を含む既存の金融メッセージ標準への対応は、既存システムとの統合を支えるための取り組みです。

協業について

SORA Nexusを、ともに。

中央銀行、金融機関、開発者の皆さま。インフラで実現したいことをお聞かせいただくか、service@soramitsu.co.jp までご連絡ください。